学校が夏休みなどの長期休み期間、1日1食しか食べられない子供の割合は「給食有り時0.4%⇒給食無し時6.9%」、2食しか食べられない子供の割合は「給食有り時12.3%⇒給食無し時36%」へと急増します。※1
また、子供食堂の数は2024年度で1万か所を超えました(10867か所)。2016年度が319か所ですから、わずか8年間で34倍にまで急拡大ました。※2
先日、日本一のお金持ち自治体と言われている東京都港区で子供食堂を運営されている『みなと子ども食堂』の副代表・阿部浩子氏に地方創生講座へ御登壇いただき、お話を聴きました。
【NPO法人みなと子供食堂】
全国の子供食堂は様々な目的(子供の居場所づくり、学習支援、食事支援など)で運営されていますが、みなと子供食堂は貧困家庭を対象としています。
例えば、小学1年生になる前の準備(ランドセルや文房具、上履きや体操服等々)が準備できない家庭があります。子育て支援金が支給されても、1日1食しか食べられないので食費へ回して購入することができないのです。また、夏休みなど学校が休みの時は給食が無いので貧困家庭の子供達は痩せていきます。猛暑の夏も電気代が高いのでエアコンは使いません。近年の猛暑は以上ですから熱中症になり死亡する人も増えている中、昼間は外出してクーラーの効いた施設の中で過ごし、夜は自宅でウチワで我慢しているのです。まさに命の危険と隣り合わせです。さらに、身体も大きくなったので脚が入りきらないボロボロになった上履きを親に買ってと言えずに吐き続けている子供、美容院や理容院で髪を切ったことが無くボサボサの頭になっているお年頃の女の子、下着は外から一番見えないためボロボロになった下着を使用し続けている子供等々、様々なケースの対応をみなと子供食堂は実施しています。
こうした家庭は総じて「一人親で非正規雇用の家庭」です。
特にコロナ過で会社が倒産し職が無くなった後、正規職員の職に就けない家庭が増えています。その理由は、子供が小さく助けてくれる人も近くにいないためです。子供が小さいので急に早退したり休んだりしなければなりません。そのため、正規職員で採用されづらく、非正規雇用でしか仕事に就けないパターンが多いのです。
子供食堂は、そうした家庭で食事も我慢しなければならない、塾にも行けない、友達との遊びも我慢しなければならない子供を対象としていますが、根本的な問題の解決は、子供食堂では到底できません。社会全体の仕組みや考え方、法制度等が変わらなければ現状が変わらないところが多々あります。
最近の「米騒動」も大変ですが、貧困家庭は、お米も高騰して購入できませんので、子供たちは給食でしか白米を食べられないそうです。
日本は、バブルがはじけた後から正規雇用から非正規雇用へと転換する企業が増えましたし、この30年程は給与も上がっていませんし、そのくせ物価は何かにつけ上がっていますので貧困家庭は非常に厳しい生活をしています。
地方創生というと「人口減少対策」とか「出生率の増加策」という話が前に出てきますが、社会の現場では、こうした格差の拡がりや子供の貧困(シニアの貧困もあります)が拡大しているということにも目を向けなければならないと思います。
私達が出来ることは沢山あります。しかし、現場でいくら頑張っても問題の本質は社会構造の仕組みや制度替えが必要な場合もあります。今年は参院選もあるのですが、「少子化対策」とか「社会全体で子供を育てる社会の実現」とか言うのであれば、各政党もこうした現場の現実に目を向けて、社会構造変革へ取り組んでいただきたいと願います。
※1 認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン『ひとり親家庭の子どもの長期休み期間中における食事状況に関するアンケート』
※2 認定NPO法人むすびえ『子供食堂全国箇所数調査』
※写真 NPO法人みなと子ども食堂『生活実態調査』より
