Maniken〜地域経営のためのあたらしいマニフェスト研究所〜

【まちづくりは『人』づくり】

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一般社団法人Maniken
地域経営のためのあたらしいマニフェスト研究所
中村 健

長野県高森町の壬生照玄町長にWASEDANEOにて開校されている地方創生講座へ御登壇いただきました。壬生町長の講座のタイトルは「まちづくりは『人』づくり」でした。

長野県高森町は、長野県の南信州エリアに位置していて、南信エリアでは最大人口規模を誇る飯田市に隣接しており、これまで緩やかな人口増をしてきました。その要因は、飯田市よりも地価が安く戸建てを購入するにしてもマンションやアパートを借りるにしても飯田市よりも家賃が安いこと等が背景にあります。市と町の違いと言うだけで不思議と地価が変わることってありますよね。

しかし、単に地価が安いから人が住むのか?と言えば必ずしもそうではなく、「生活環境が整っているかどうか」が実際には生活拠点を選択する際には重要な判断基準にしている人が多いのではないでしょうか?例えば、「買い物できるか?」、「学校などの教育環境はどうか?」、「医療環境はどうか?」、「公共交通網はどうか?」、「ガソリンスタンドは近くにあるか?」等々。高森町は、このような生活環境が整うように企業や医療機関等に声をかけて街づくりに取り組んできましたから、生活環境は充実しています。そんな地域ですから人から選ばれているという要因になっていると思われます。

しかし、壬生町長は「人口増加が必ずしも良いことではない」と言います。その理由は、新しく高森町に住んでくれる人の中には『自分の地元ではしがらみが強いため別の地域で住みたい』、「町内会づきあいが面倒なため違う街で住みたい」等の理由で他の市町村から移り住んでくる人が多いという。この結果、何が起こるかと言えば「町内会へ加入しない」、「地域の活動へ参加しない」など高森町が古来から取り組んで街が維持できていた活動が崩壊寸前にあるそうです。例えば、5月30日はゴミゼロの日、高森町では、住民の皆さんに呼び掛けて、町全域で、一斉清掃を住民の皆さんが取り組んできていた活動があるが、こういう活動にも参加してこないため、ご近所さんとの付き合いも悪くなり、コミュニティが善くなっていかないというわけなんです。

壬生町長は、こうした状況をふまえ、住民参画の取組をを進めるとともに町役場の職員の意識改革、小学校からの教育現場の教育改革に取り組んでいます。具体的には、役場の若手職員は積極的に学校へ出かけていき、授業の教師として小中学生たちとまちづくりの授業を実施したり、小中学生がまちづくりへ参画する経験を増やすために高森版キッザニアのような活動をしていたり、実際の経済に触れるために本物の商売をする部活を立ち上げたり・・。とにかく、一番時間や予算をかけているのが「人材育成」なわけです。

こうした効果はすぐに結果が出るわけではありません。その変化も見えづらいかもしれない。しかし、目先のことでいうと「地域に飛び出して行ったり子供達と一緒に街づくりに取り組んできたことで、確実に職員や大人たちの意識が変わってきた」という。今の社会は大人が創っています。その大人たちが変われば、次の社会の担い手となる今の子供達へ、少しでも今より良い状態でまちづくりをバトンタッチできるかもしれないという考えで取組んできているのです。

私自身、高森町へ御縁を頂いて今年で10年目となった。この10年を見ていても、壬生町長や高森町の「まちづくりのために『人』づくり」がありました。この精神は高森町の憤怒になりつつあるように感じています。

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