Maniken〜地域経営のためのあたらしいマニフェスト研究所〜

2005年の”警告”「自治体に不足している〇〇という機能」~8/6開催にあたって

アバター画像
一般社団法人Maniken
地域経営のためのあたらしいマニフェスト研究所
青木 佑一

▽イベントお申込(外部リンク)
https://20250806jinji.peatix.com/view

冒頭からお詫びしなければならないが、私たちは「職員消滅自治体」という表現を使った。
確かに、少し言い過ぎかもしれない。だが、どうかご容赦いただきたい。

耳目を集めるために、あえて「消滅可能性自治体」という衝撃的なワードを意識し、この言葉を使ったのは事実だ。
刺激的な言葉を用いたことで、不快に思われた方がいたなら申し訳ない。

しかし、それでも伝えたいのは、この危機感である。
首長も、副首長も、職員も、そして議員や市民の皆さんも。
「公務員が選ばれなくなった」という現象を、それほど切実で深刻な問題として捉えてほしい
のだ。

■「業績・成果」と「組織・人材」の両輪をまわす

「経営」とは何か。
目指す姿を実現するための、さまざまな営みを指す言葉だが、大きく2つの領域に分けられる。

ひとつは「業績・成果」。自治体でいえば、政策を実現する営みそのものだ。
首長は選挙でマニフェストを掲げ、地域のありたい姿を示し、その具体像を信任してもらって当選する。
その後、役所・役場が方針や計画に落とし込み、政策実現へと歩みを進める。
選挙も行政評価も、打ち出した政策の「達成率」や「事業の進捗」に注目が集まりがちだ。
もちろんそれは、地域や住民にとっての「成果」や「効果」に直結しており、重要視されるのは当然である。

だが、ここにひとつの落とし穴がある。
「それを実現するためには、何が必要か?」
経営において、使われるべき資源は「ヒト・モノ・カネ・時間・情報・権限」である。
だが、
ただ予算をつけ、組織をつくり、頭数として人員を配置しさえすれば、政策が自然に実現に向かうわけでは決してない。

例えば、首長が「組織のDXを実現したい」、「子育てで日本一のまちを目指したい」、「このまちの持続可能性を高めたい」と考えたとしよう。
「この人に任せれば大丈夫だ」と職員を配置しただけで、物事が成し遂げられるわけではない。

「組織のDXが実現しているとはどのような姿か?」
「子育ての何を変えれば、日本一といえるのか?」
「持続可能性を高めるとは、具体的にどんな要素が重要なのか?」
こうした問いを丁寧に読み解き、目的や目標を設定することから始まる。
そのうえで、庁内だけでなく、議会や地域とも対話を進め、少しずつ合意を形成し、
段階的な道筋を描き、プランを実行できる”舞台装置”を整え、一歩一歩進めていく。
――その過程に、しばしば数年、あるいは十年以上かかることすら珍しくないのが自治体経営の現実だ。

こうしたあり方を鑑みれば、政策実現の成否を左右するのは、けっきょくのところ「人」なのではないか?
という結論に至る。

令和の時代、モノもカネも限りがある。
それ以前からも実は、日本にとって最大の資本は「人材(人的資本)」だったのではないか?

そしてその「人」の集合体である「組織」への視点が欠かせない。
ただ単に組織図に手を入れればよい、のではない。
思いを持つ、生きている人材の集合体として、活き活きとした組織をどのように創り、どのように動かしていくのか?
このテーマは、経営学でも過去にないレベルで注目されている分野である。
経営の大きな要素としての「業績・成果」とともに、もうひとつ、「組織・人材」という両輪でバランスをとる、ということがそもそも不可欠なのである。

■2005年に語られた”警告”と現代的な意義

マニフェストを提唱した北川正恭・早稲田大学教授(現・名誉教授)が所長をつとめる早稲田大学マニフェスト研究所に2005年、「人材マネジメント部会」が立ち上がった。

早稲田・慶応大の共催による「公務員意識改革プロジェクト」の事務局を務めていた佐賀県職員課・副課長の白井誠さんと、PJの民間委員として参画していた経営コンサルタントの出馬幹也さんが話し合い、「PJ活動の熱を冷ましたくない、何とか活動を続けたい」という思いで、北川先生に直談判を重ねた。

結果、「人事系の部会を立ち上げてはどうか」というところまで合意され、部会の名称について「人事研究会かね?」と問う先生に対し、出馬さんは「人事屋だけの研究会では何も変わらない、ただの“勉強会”になると思います。マニフェスト推進を図るためにも、自治体の中で機能していない“人材マネジメント”、ぜひそれを名称にさせて下さい」と進言した、という。

それは今から20年前、地方分権一括法が施行されて5年、まだ地方分権の熱が冷めやらぬ時代だった。
出馬さんはさらに言葉をつづける。
自治体には、そもそも人材マネジメントが機能していない
目指す部会は、評価制度論や研修体系論などに留まる人事屋の集まりではなく、各現場の組織と人材、それらの適切な編成と運営を担うべき管理職、そのような方々に広く参加してもらい、実践的に研究する”研究会”です。
人事屋の集まりではないことを示すためにも、行政経営品質普及に尽力されており、北川先生もよくご存じの鬼澤慎人さんも誘いましょう。ぜひそのような形でやらせてほしいのですが…?」

この問題意識が、いま再び、私たちの前に突きつけられている。

「職員消滅自治体」という言葉は言い過ぎかもしれない。
だが、
現実には多くの自治体において、現場組織が疲弊を重ね、中堅・若手の優秀な職員が次々と去ってしまうという、人材マネジメントの機能不全=「職員消滅」へと向かっている、ということは確かだろう。
だからこそ私たちは、自治体の「組織・人材」の課題を、真正面から語らなければならない


(ご案内)

「組織人材マネジメント調査シンポジウム2025~先進自治体に学ぶ “職員消滅”時代の自治体人事~」
https://20250806jinji.peatix.com/view

早稲田大学デモクラシー創造研究所が実施する「組織人材マネジメント調査」が今年で2年目を迎え、採用・育成・配置・評価・新陳代謝といった自治体人事の核心に迫るデータと実践知が蓄積されつつあります。
このシンポジウムでは、最新の調査結果とともに、今後の地域経営における「自治体人事の役割」を問い直します。
人材戦略こそが政策の成否を左右します。特に人材が「採れない・辞めちゃう・続かない」という危機的な状況を前に、経営層・人事課長・実務担当それぞれの認識と行動変容が求められています。当日は、多様な立場からの提言と対話を通じて、参加者が自組織での変革のヒントを得ることを目指します。是非ご参加ください。

登壇(予定):
・中村健(早稲田大学デモクラシー創造研究所 地域経営部会長/元徳島県川島町長)
・大谷 基道(獨協大学法学部 教授)
・自治体人事担当者による事例紹介/熊本市・大阪府四条畷市
・HR分野の民間事業者 ほか

日時:2025年8月6日(水)13:30~ 17:00(13:20 Zoom入室開始予定)

形式:オンライン配信(Zoom)  ※1つの申込で複数名の同時視聴も可能です。


対象:自治体職員・関係団体職員(首長・副首長、人事課長、人事担当者 など)

参加費:無料

定員:200名(先着順/お申し込み期日は8月5日)

主催:一般社団法人Maniken / 協力:早稲田大学デモクラシー創造研究所

お問い合わせ先:事務局  一般社団法人Maniken(問い合わせフォーム)

■内容・スケジュール ※予定。変更の可能性があります。ご了承ください。
13:30~
  オープニング・趣旨説明(青木佑一)
【問題提起】「組織人材マネジメント調査が明らかにした”自治体人事”の現状・危機・処方箋」(登壇:中村健)
【基調講演】「自治体人材マネジメントの最前線 ― 課題解決のヒントと実践」(登壇:大谷基道)
 <休憩>
14:25~
【事例発表①】テーマ:育成・異動・評価+HR-Tech
 自治体①:「人事に職員の資質・特性データを活用しよう!~長野県高森町での実践事例」(登壇:中村健)
 民 間①:「未来の役所をデザインするはじめの一歩~データで職員の個性を活かし、組織を強くする」
      株式会社エスユーエス コンサルティング事業部 HRコンサルティング課 課長 長沼 延浩氏
 <休憩>
15:10~
【事例発表②】テーマ:方針策定・展開、戦略人事+民間力
 自治体② 「『熊本市職員成長・育成方針』を通じた組織と人が成長するための取組」
       熊本市総務局行政管理部 人事課 人材育成センター 主査 瀬井 健人氏
 自治体③ 「『日本一前向きな市役所』をめざした組織改革と風土変化の実感」
       大阪府四條畷市総務部 人事課長 川崎 有紀氏
 民 間② 「四條畷市の組織改革を支えた民間の力」
       エン・ジャパン株式会社 ソーシャルインパクト採用プロジェクト プロジェクトリーダー 福島 裕太氏
ウェブフォーム・チャットによる質問募集
 <休憩>
16:25~
 質問・感想の全体共有・質疑応答(青木)
 【総括】登壇:林・小野 有理氏(登壇:元四條畷市副市長、有理舎主宰、地域経営部会プラクティショナー)
 事務連絡/地域経営部会・人事研究会のご案内(事務局)

※17:00終了後に質問会を開催(10分程度)


▽イベントお申込(外部リンク)
https://20250806jinji.peatix.com/view

\SNSでシェア/
上部へスクロール