芽室町議会で生成AI研修を行いました

芽室町議会は、早稲田大学デモクラシー創造研究所の「地域経営のための議会改革度ランキング」で毎年上位に位置する議会として有名ですが、今回はこの芽室町議会で生成AI研修を行いました。今回の研修では、基本的な操作だけでなく、議会活動の質を高めるために生成AIをどのように活用できるか?をテーマに、実際にAIを動かしながら考えてみました。

全国の議会を見渡すと、文章の要約や資料作成、チラシデザインなど、さまざまな場面で生成AIの活用が広がっています。実際に、上記の早稲田大学デモクラシー創造研究所「地域経営のための議会改革度調査2025」の結果を見ても、この1年で生成AIの活用が急増しています。
その一方で、生成AIは常に正しい答えを出すものではなく、注意が必要な場面もあります。もっともらしい誤情報を出すこともあれば(ハルシネーション)、利用者の前提に合わせて答えてしまうこともあります(シコファンシー)。議会として活用する際は、根拠を必ず確認し、最終的な判断は人間が行うことが不可欠です。今回の研修でも、まず生成AIの基本的な仕組みや注意点を確認したうえで、議会活動にどのように生かせるのかを考えていきました。
「効率化」だけでなく「AIで議会機能を強化する」
生成AIの活用というと、要約する、住民向けに分かりやすい説明資料を作成する、文章のたたき台を作るといった使い方が比較的イメージしやすいものです。これら「業務を効率化する」と同時に、生成AIを「議会機能を強化する」ことにつなげることが重要です。議会機能とは、多様な住民の声を受け止め、論点を整理し、異なる意見を集約しながら、地域の将来に関わる意思決定を行う営みのことと言えますが、生成AIは、その過程で必要となる大量の情報整理や、過去の議論の確認、分野をまたいだ政策課題の把握に力を発揮します。議会は、会議録として過去の議論を文字データで蓄積しており、生成AIを活用する上で情報の宝庫です。
大量の資料を読み解き問いを深める

研修では自治体の計画や会議録などをもとに、地域課題をどのように読み解くかについて扱いました。これらの文書は大量の文字量があり、人の目だけで横断的に詳細に確認し分析することは困難です。そこで生成AIを活用することで、複数の資料をもとに、どの計画に何が書かれているのか、過去の議論では何が論点になっていたのか、さらに議会としてどのような問いを立てるべきかを整理することができます。
今回の研修にあたっては事前に提供いただいた、過去4年分のすべての会議録データ、毎月発行している議会だより4年分のデータをAIに読み込ませ、芽室町議会オリジナルのAI(RAG)を作成して演習を行なっていきました。また、町が策定している各種計画を複数読み込ませたAIも作成し、計画横断分析の手法を具体的なプロンプトを動かしながら演習しました。計画間で共通の課題は何か?同じ課題に対応するはずが計画間で連動できていないものはないか?などAIを使うことで整理できるポイントがたくさんあります。
住民の多様な意見を想像する
政策決定は、時として利益と不利益がトレードオフの関係になる難しい判断が伴います。ある住民にとって必要な政策が、別の住民にとっては負担になることもあります。いまと未来でも同様です。今だけを見て判断していては将来に苦しい選択を強いるかもしれません。そこで、生成AIを使って複数の住民像を設定し、それぞれの生活実感に基づいて論点を考えることで、見落とされがちな少数意見や、意見の違いによる懸念、合意できそうな共通点を把握することができます。
エヌビディア(NVIDIA)が公開したオープンデータNemotron Personas Japanは、国勢調査等の統計に基づき日本の人口や文化特性に基づいてAIが生成した100万人分のデータセットです。NVIDIAのデータや、実際の住民アンケートデータを元にして作成したペルソナ(架空の住民像)を用いて論点を広げ、問いを深めるために活用する方法を実践しました。
生成AIは、議会機能を代替させるものではなく、議会が担う意思決定機能、住民代表機能をより実質的に発揮するための補助として活用されるべきですが、今後もManikenでは、生成AI時代における地方議会のあり方について、実践的な研究を進めてまいります。