
住民の声をより広く、深く聴き、政策や議論につなげるために、AIを活用したブロードリスニングの仕組みを活用して構築した「聴くAI*」をこの度リリースしました。
*「聴くAI」は、住民の声をオンラインで集め、AIで整理・可視化し、議会や行政の政策づくりにつなげるための仕組みです。「デジタル民主主義2030」が公開しているオープンソース「広聴AI」をもとに、Maniken独自の機能を加えて構築しています。
「意見を募集しました」で終わっていないか
議会や行政は、これまでもさまざまな方法で住民の意見を聴いてきました。議会報告会、意見交換会、住民アンケート、パブリックコメントなどどれも大切な取り組みです。
一方で、従来の広聴には、いくつかの限界がありました。会場まで来られる人、開催時間に参加できる人、人前で発言することに抵抗がない人など、参加できる住民が限られていました。声を届ける現実的な手段を持たない人も多くいました。
また、仮に住民の声を集めることができても、どのような意見が多かったのか、共通する問題意識は何か、少数でも見落としてはいけない意見は何か、意見同士はどのような関係にあるのか、など深く分析するには労力のかかる作業でした。意見の数が増えるほど、人の手だけで整理し、政策上の論点に変えていくことは難しくなります。その結果、アンケートやパブリックコメント等、形式的に実施しただけで終わってしまい、議論や政策形成に十分つながらないことがありました。
意見が集まらないのは、住民に意見がないからではない
例えば、パブリックコメントでは、計画案や条例案などの資料を示し、「ご意見をお寄せください」と呼びかける方法が一般的です。
しかし、住民の立場から考えると、
「資料のどこを読めばよいのかわからない」
「何について意見を言えばよいのかわからない」
「前提知識がないので、意見を書きにくい」
という状態になってしまいます。
結果として、意見を書くことを途中で諦めたり、すでに強い関心や専門知識を持っている人だけが参加したりする仕組みになってしまいます。意見が集まらないのは、住民に意見がないからではなく、意見を言いやすい情報の示し方、問いかけ方になっていないのです。
そこで、「聴くAI」では、オリジナル機能として、PDF資料やウェブサイトのURLを登録すると、AIが内容を読み取り、背景、要点、主な論点、住民から意見を聴きたいポイントを整理します。住民は、いきなり難解な計画書や条例案を読むのではなく、「何が検討されているのか」「なぜ意見を募集しているのか」「どの点について意見を求められているのか」が整理されて確認でき、自分の経験や問題意識を伝えやすくなります。
オンラインで意見を募集する際には、攻撃的な投稿や誹謗中傷への対応も必要です。「聴くAI」では、侮辱、人格否定、差別表現、脅迫、暴力の示唆、私生活や家族、身体的特徴への攻撃などをAIが文脈から確認します。問題を検出した場合、投稿を機械的に削除するのではなく、投稿者に対して内容を整理し、再検討するよう呼びかけます。自由な意見表明を守りながら、建設的な議論につながる場をつくるための機能を確保しました。
AIを使って多様な意見を可視化し政策につなげる
集まった意見をAIが分析し、似ている意見や論点ごとに整理します。全体の意見分布を地図のように見ることができるほか、大きなテーマの中にある細かな論点、クラスタごとのコメント要約、各テーマの規模や比率などを複数の方法で確認できます。「賛成が何件、反対が何件」という集計ではなく、その意見がどのような経験や問題意識に基づくのか、異なる意見の間にどのような争点があるのかを示します。
「聴くAI」は、特に地方議会で活用してほしいシステムです。議会は、住民の多様な意見を持ち寄り、論点を整理し、議員同士で議論(議員間討議)し、最後に結論を出す役割を担っています。多様な意見を集約し、論点を整理する部分はAIが最も得意とする作業の一つです。価値判断を伴う討議と決定は、議員・議会が責任を持って行う必要がありますので、AIを使いこなして、討議と決定の質的充実を図ることに人間の資源を集中させることができます。
議員個人の経験や、個別に聞いた住民の声を個別要望で終わらせず、同じ問題を抱える人がほかにもいるのか、そこから全体最適を見出す方策を考えたり、どのような選択肢が考えられるのかを整理したりすることに活用して欲しいと思います。
「聴くAI」は、議会活動のすべての起点となる「聴く」の部分を変えるためのシステムです。
実証研究にご協力いただける議会・自治体を募集します
「聴くAI」は、今後、実際の議会や行政の現場で活用しながら、さらに改善していきます。
現在、実証研究として費用負担なく活用していただける議会、議会の委員会、自治体を募集しています。
例えば、次のような場面での活用を想定しています。
- 議員間討議に向けた住民意見の収集
- 議員提案条例の制定・改正に伴うパブリックコメント
- 委員会の所管事務調査や政策提言
- 議会活動に対する住民アンケート
- 総合計画、個別計画、条例などに関する行政のパブリックコメント
- 子育て、防災、公共交通、公共施設など、個別政策に関する意見募集
「まずは小さなテーマで試してみたい」「委員会で活用方法を検討したい」「パブリックコメントのあり方を見直したい」といったご相談も歓迎します。
「聴くAI」を、住民と議会・行政との関係を変える起点にしていきたいと考えています。実証研究に関心のある議会、委員会、自治体の皆さまは、ぜひManikenまでお声がけください。
「聴くAI」の詳細や画面イメージは、公式ページでご覧いただけます。